消費税率引上げに向けての経過措置の対応(第1回)

消費税は、平成26年4月1日に8%、平成27年10月1日に10%へと2回にわたる引上げが予定されています。政府は、消費税率の引上げに伴う、中小・小規模事業者の経営に及ぼす影響を最小限に止めるため、価格転嫁対策、経過措置など、様々な措置を講じていくこととしています。
今回は、一定の要件を満たす取引については旧税率が適用される「経過措置」の対応方法等について、税理士・公認会計士の城所弘明氏に全3回にわたり解説をいただきます。

(はじめに)

消費税法改正に伴う消費税率の引上げは、消費税率及び地方消費税率について、次のとおり2段階で引き上げることと予定されています。

(出典:国税庁「消費税法改正のお知らせ」)

区分/適用開始

現行

平成26年4月1日

平成27年10月1日

消費税率

4.0%

6.3%

7.8%

地方消費税率

1.0%

(消費税額の25/100)

1.7%

(消費税額の17/63)

2.2%

(消費税額の22/78)

合計

5.0%

8.0%

10.0%

また、国税庁から「平成 26 年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて(法令解釈通達)」(以下「経過措置通達」という)が公表されました。

 

1.消費税の経過措置とは何か

 消費税における課税取引については、課税資産の譲渡等の時期によって適用する税率が決まり、原則として平成 26 年4月1日(以下「施行日」という)以降の譲渡等については8%の税率を使うことになります。


ただし、一定の要件に該当する取引の場合は施行日以降の譲渡等についても旧税率を適用することとされています。これを「経過措置」といいます。

今回の消費税改正における経過措置は、消費税率が8%に改正される平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等であっても現行の5%が適用されるケースを定めているものです。

したがって、施行日の前日(平成26年3月31日)までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、これらが施行日以後に行われる場合には、経過措置が適用される場合を除き、当該資産の譲渡等及び課税仕入れ等について8%が適用されることとなります(経過措置通達2)。

経過措置が適用される主な取引については、「消費税法改正のお知らせ」(国税庁)によりいくつかの項目が列挙されています。今回からの「消費税率引上げに向けての経過措置の対応」ではそれぞれの取引別にその概要や要件などをまとめ、それぞれにおけるポイントとともに3回にわたってお知らせしたいと思います。

第1回目は「請負工事等」についてです。

【キドコロ先生のコメント】

消費税の本則による課税事業者にとって、この経過措置の適用は、消費税適正な価格転嫁ができる限り損得はありません。

消費税課税の最終負担者である一般消費者にとっては敏感な問題になります。

 

2.請負工事等の経過措置の概要

消費税法上、請負による資産の譲渡等の時期は原則として相手方に引き渡した日もしくは役務の全部を完了した日とされています。しかし、消費税の改正に当たっては税率の引上げに伴う駆け込み需要やその反動等による影響が大きいことなどから、平成 8 年 10 月 1 日から平成 25 年10月1日(以下「指定日」という)の前日までの間に締結した請負工事等に係る契約が行われた場合には、引渡しが平成 26 年 4 月 1 日(施行日)以後になった場合であっても、現行の5%が適用されることになります。

また、指定日以後に契約したものであっても引渡しが施行日の前日までに完了するものも現行の5%が適用されます。

さらに、契約後に追加工事等で契約金額が増額した場合については、元々の契約を含む全体が8%(新税率)の適用を受けるわけではなく、増額分の金額のみが8%(新税率)の適用対象となります。ただし、指定日までに結んだ契約を何らかの事由で一旦破棄し、新たに再契約する場合については、再契約分全てが8%(新税率)の適用対象になります。

 

3.経過措置の対象となる「請負工事等」の契約の内容

対象となる契約は「仕事の完了に長期間を要し、かつ、その仕事の目的物の引き渡しが一括して行われることとされているもので、契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているもの」(消費税法施行令附則第4条)となっているため、この経過措置の対象となる契約は建設請負工事契約だけに限られものではありません。

具体的には次のような契約が、この経過措置の対象になります。

①建設業に係る工事の請負に係る契約

②製造請負に係る契約

③測量、地質調査に係る契約

④工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計に係る契約

⑤映画の製作に係る契約

⑥ソフトウェアの開発に係る契約

⑦その他請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含みます。)

(注1)その他の請負に係る契約には、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、技術援助、情報の提供に係る契約が含まれます。

(注2)委任その他の請負に類する契約には、検査、検定等の事務処理の委託、市場調査その他の調査、ディスプレイ等の企画・立案に係る契約が含まれます。

(注3)「工事の請負に係る契約」は「日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる建設業に係る工事につき、その工事の完成を約し、かつ、それに対する対価を支払うことを約する契約をいうものとする」(経過措置通達10)とされています。

 

4.経過措置の適用要件

この経過措置の適用を受けるためには、次に掲げるすべての要件を満たす工事等の契約であることが要件です。

①工事等の契約が指定日(平成 25 年 10月 1日)の前日までに締結されているものであること。

(注)上記3①の契約にあっては、この適用要件を満たせば以後の②から④までの要件を問いません。

②工事等の契約に基づく仕事の完成に長期間を要するものであること。

(注)上記3の②から⑥の契約にあっては、仕事の性質上、その仕事が完了するまでに通例的に長期間を要することから定められたものであり、実際に長期間を要するか問いません。

③工事等の契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されたものであること。

④工事等の契約に基づく仕事の目的物の引き渡しが一括して行われるものであること。

 

【キドコロ先生のコメント】

この経過措置の適用を受ける場合には契約の相手方に対し、その課税資産の譲渡等が旧税率の適用を受けたことを書面により通知しなければなりません。ただし、この通知は契約書や請求書等にその旨を表示することとして差し支えありません。

 

5.経過措置を理解するためにクイズです!
次のAからEまでの請負工事等に係る契約の取引について、適用される消費税の税率はいくらでしょうか?お答えください。

消費税転嫁クイズ画像

 

<解答>
消費税転嫁解答

【キドコロ先生のコメント】
この経過措置の対象となる「請負工事等」に係る契約は、多数存在すると思われます。経過措置の適用を受ける場合には、契約の締結の際に適用要件等をしっかりと確認することが必要です。

城所 弘明(キドコロ ヒロアキ)
役職:所長 公認会計士・税理士・行政書士
所属:城所会計事務所

《プロフィール》
横浜国立大学を卒業し、1980年公認会計士及び税理士の登録。
現在、日本公認会計士協会「経営研究調査会」事業承継専門部会 部会長、日本商工会議所「税制専門委員会」学識委員。
著書には、『実践 経営改善計画の進め方』(清文社)、『社長さん必読!プロが教える事業承継の税金と法律』(東洋経済新報社)、
『専門家のための Q&A経営承継円滑化法・事業承継税制徹底活用』(ぎょうせい)等がある。

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